建築家の藤村龍至の建築作品10選。代表作のすばる保育園やBUILDING Kなど

2019/08/19

こんにちは。
今回は建築家の藤村龍至の建築作品10選。代表作のすばる保育園やBUILDING Kなどです。

超線形設計プロセスという独自の設計手法を提唱する建築家の藤村龍至氏。
住宅や集合住宅をはじめ、公共施設など様々な建築物を手掛けていますよね。
そこで、今回は建築家の藤村龍至の建築作品をまとめました。

藤村龍至とは

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東京藝術大学美術学部建築科准教授/RFA主宰
建築家。
1976年東京生まれ。
2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。
2005年より藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。
2010年より東洋大学専任講師。
2016年より東京藝術大学准教授。
2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長/ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。
住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手がけるほか、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメントや、ニュータウンの活性化、中心市街地再開発などのデザインコーディネーターとして公共プロジェクトにも数多く携わる。
主な著書に『ちのかたち—建築的思考のプロトタイプとその応用』(2018),『批判的工学主義の建築』(2014),『プロトタイピング—模型とつぶやき』(2014)
主なまちづくりプロジェクトに「おとがわプロジェクト」(愛知県岡崎市, 2015-2020)「大宮東口プロジェクト」(さいたま市, 2013-2016)「鶴ヶ島プロジェクト」(埼玉県鶴ヶ島市, 2011-2016)
主なアート作品に「あいちプロジェクト」(国際芸術祭あいちトリエンナーレ, 2013)「リトル・フクシマ」(堂島ビエンナーレ, 2011)
主なキュレーションに「超群島-ライト・オブ・サイレンス」(青森県立美術館, 2012)「CITY2.0」(EYE OF GYRE, 2010)「Architects from HYPER VILLAGE」(hiromiyoshii, 2010)

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建築家の藤村龍至の建築作品!

ここからはいよいよ、実際に建築家の藤村龍至の建築作品を見ていきましょう。

すばる保育園

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クライアントはプロジェクトが始まる直前に起きた熊本での震災を経て、子どもたちを守りたいとの思いから強さのある建築を希望された。
またこの保育園では体育教育に力を入れており、3歳未満児(0、1、2歳)と3歳以上児(3、4、5歳)では身体の発達に大きく差があることから、園舎を大きく2つの部分に分けることが求められた。
敷地を訪れると西隣には神社の鎮守の森が隣接しており、北東方向には水田が広がると同時に遠く花立山とそれに連なる山並みを望むことができた。
これらの周辺環境と園舎をいかに関係付けるかを考慮する必要があると考えた。
それぞれの保育室用にふたつの園庭をつくり、ひとつは鎮守の森に、もうひとつは南側の水田に向け、それぞれの園庭を囲うように園舎を大きくカーブさせ配置した。
室内外の子どもたちの動きを見渡せる結節点に職員室を含めた管理諸室を、角にステージの付いたホールを配置すると、結果的に変則的なS字のカーブの平面となった。
屋根の構造についてはいくつかの可能性を検討した。
台風時の雨の吹き込みを考慮して軒を2m出すこと、音楽の演奏や屋内での運動に用いるホール部分はステージ上で高さ4mの高さを確保することなど、場所ごとに異なる要求があった。
最終的に鉄筋コンクリートの平板が同じ180mmの厚さで軒先から園舎の屋根へ連続し、そのまま3次元曲面によってスラブが隆起することでホールの屋根とする連続的な形式となった。
自由曲面屋根の形態は、ひずみエネルギー最小化を目的とする最適化設計により形態が決定され、天井高4m、横15mのスパンの空間を無柱・無梁で覆い、壁と屋根を一体の構造とすることができた。
ホールの内側から見ると水平に切り取られた連窓からは遠景の山並みを近くに感じることができる。
外側から見ると盛り上がった屋根の形状と、遠くに見える花立山の形状が重なって見え、アルゴリズミック・デザインによる機械言語による形態と、自然の形態がぴったりと重なり、連続した風景となっている。
子どもの成長に寄り添い、豊かな自然環境と一体となる「連続体としての建築」が実現できたと感じた。

すばる保育園 | RFA | RFL

福岡県小郡市にある藤村龍至氏が設計した保育園「すばる保育園」!
S字カーブのような平面が特徴の建物で、平面の窪んだ部分を利用して水田と神社側に2つの園庭が設けられています。

角に配置されたシェル構造によるホールの屋根は、山並みのような隆起した形状となっていますよ。
この作品はグッドデザイン賞や福岡県美しいまちづくり建築賞の大賞を受賞しています。

社会福祉法人健晴会 すばる保育園 (福岡県小郡市)

 

 

BUILDING K

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「Shop U」の設計にあたって自らのつくってきた模型を時系列に並べ、全体を振り返ったとき、それらが「ジャンプしない、枝分かれしない、後戻りしない」という原則に貫かれていることに気がついた。
そのようにして作成された模型群は、ひとつの単純なヴォリュームが複雑なヴォリュームに至るひとつながりのタイムラインを示し、まるで卵から魚へと至る、生物の孵化過程を見ているかのようだった。
新しいプロジェクトはショップのインテリアよりはるかに大きな規模であった。
できるだけ心を開放して、ゼロから建築を設計するとどうなるだろうという気持ちが、頭のなかに思い浮かぶ情景を実現してやろうという気持ちを上回った。
単純なかたちを置く。
決められるところから決める。
やがて透明なガラスの基壇の上にペンシル・ビル(細長いビル)が並んでいるようなかたちが生まれてきた。
構造と設備のエンジニアとのセッションから、生まれていくかたちに次々と意味が与えられていった。
最終的に38個の模型が残った。
それらを生み出すプロセスを振り返ると、21項目の条件が設定されてきたことがわかった。
要件の定義が固まり、設計のためのパラメータ(媒介変数)が定まるまでのあいだを「検索過程」、設計が定まってから異なるケースごとに形態を比較して最終形を定めるまでのあいだを「比較過程」と呼ぶことにした。
いくつかの傾向があった。
例えば21項目の条件は、最初は大きな条件から定め、小さな条件へと向かっていく。
小さな条件を先に決めてしまうと可能性が狭くなる。
私は「ジャンプしない、枝分かれしない、後戻りしない」を原則として、とりあえず決まっていることをかたちにして、課題をみつけ解決するという単純なフィードバックを細かく反復するそのデザイン・パターンを「超線形デザインプロセス」と呼ぶことにした。
単純な線形でもなく、非線形というほどマジカルでもない。
手続きを都度明らかにして、生まれてくる小さなシステム同士の統合を繰り返していくと創発が起こりやすくなる。
いつのまにか出発点が遠く感じられるほどに、高くまで登っているようなイメージである。

BUILDING K | RFA | RFL

東京都杉並区にある藤村龍至氏が設計した共同住宅と店舗の入ったビル「BUILDING K」!
メガ・ストラクチャーを採用した建物で、5階に大きな梁を設け、そこから2〜4階の住戸部分を吊り下げているおもしろい構造となっています。

設備と構造を一体化することにより、ペントハウスや気持ちの良い路地空間を屋上に設けるなど有効活用されていますよ。
この作品はINAXデザインコンテスト審査員特別賞を受賞しています。

 

 

家の家

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少し特殊な条件での設計が続いていたところへ、比較的オーソドックスな条件で住宅の設計を依頼された。
畑として使われていた東京郊外の土地が開発され、新しい住宅群が一斉に建設されようとしていた。
今回は都心部のように3階建て以上が前提ではなく、平坦な住宅地の一角、しかも角地だった。
ついに木造2階建ての、「普通の」住宅に取り組めそうな敷地に出合うことができた。
いつものように、四角いヴォリュームを置くところから検討を始めた。
庭を取りたいと考え、小さな突起を出した。
検討を続けた結果、今回はいつものように他律的に解くのではなく、少し自律的に解いてみようと思った。
メインヴォリュームの寸法は敷地境界線から追いかけた数値ではなく、6,000mm四方の正方形とした。
そこに6,000mmの長さのサブヴォリュームを接続した。
1階のリビングと外部の庭が、まったく同じ大きさになった。
2階は4分割して3,000mmの部屋をふたつと水回りを置いた。
正面をどちらに取るべきか検討した結果、妻面を西側に向けることにした。
緩い勾配屋根を載せた妻面に据えられた窓は、掃き出し窓(1階で出入りにも使われる窓)のプロポーションで2階の中央の、梁がきそうな位置に据えられた。
北側と南側の立面の2階には軒にピッタリと付いた、梁を横断しそうな位置に開口がある。
木造2階建て、勾配屋根、吹付け塗装。
周りに建っている住宅と構成要素はまったく同じである。
だが、配列が慣習的なものとちょっとだけ違うようにつくられた住宅である。
しかしそのささいなズレが生み出す自由さが全体に満ちていると感じた。
ロバート・ヴェンチューリが「母の家」で取り組んだテーマの現代版。
そして日本版、あるいは東京郊外版である。
「ビル」「倉庫」「小屋」ときて、この家は何だろうと考えた。
「家の家」としか呼びようのない住宅に見えた。
慣習を読み解き、「家」を構成する要素を丁寧に与え直した、「批判的な家(critical house)」である。
今後、日本の郊外住宅地で住宅を設計するための、ひとつのプロトタイプを設計できたような気がした。

家の家 | RFA | RFL

東京郊外の角地にある藤村龍至氏が設計した住宅「家の家」!
周囲の家に馴染むかわいい家型のファサードが特徴の木造2階建ての建物で、2つのヴォリュームが中庭を囲むようにL字型に配置されています。
窓の位置や大きさ、内部にある剥き出しとなった鉄骨の柱など個性を感じる建築となっていますよ。

 

 

OM TERRACE

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さいたま市の大宮駅前に市が所有する土地があり、従前から要望のあった公衆トイレを建て替えようという話が出た。
その際、大宮では東京オリンピック・パラリンピックなどの国際イベントが開催されることから「おもてなし機能」を強化するという目標が立てられた。
具体的に何をもって「おもてなし」とするかは地元と対話しながら定めてほしいという条件のもと、私は設計者として選ばれた。
アンケートではきれいなトイレを望む声が多く、Wi-Fiが欲しいという声も聴かれた。
他方でパブリックミーティングではまちの商業との関連で意見が多く交わされた。
交通結節点である大宮は不動産価値は高いものの、賃料が高いためにナショナルチェーンの店舗が多く、新しい商業事業者が育っていない。
だから、この土地は、事業者の育成のために使うべきだというものだった。
道路や広場公園などの公共空間を積極的に開放することで新しい商業プレイヤーを育て、まちを活性化する。
そのことがまちの「おもてなし機能」を高める。
そんな今日のパブリックスペースの考え方に呼応する建築をつくりたいと考えた。
トイレのために確保された予算をやりくりして、全体を「ストリートのようなひとつながりの連続体」として実現したいと考えた。
1階のトイレや駐輪場、屋上のテラスを緩く変化のあるふたつの階段でつなげる。
トイレから階段、テラスにかけて設置する手すりや壁を、場所によって透過させたい、目隠ししたい、スクリーンを取り付けたい、などの要求条件の違いを反映して素材を切り替えつつ連続的に変化させる。
また主要構造部を構成する鉄骨の1次部材は断面を限りなく軽快なサイズとし、ベンチやカウンターの設置される手すりを構成する2次部材はベンチの荷重やスクリーンの風荷重を負担させるため部材の断面を少し大きなものとし、全体が「1.5次部材」で構成されたかのようにして扱う。
「連続体としての建築」が、多様な要求と向き合うひとつの構えとなった。
まちづくりの過程に寄り添い、ボトムアップで設計していくことは、計画的で合理的な建築を目指す近代主義が次第に陥ったような硬直性を回避し、ニーズにより柔軟に応えることを実現するかもしれない。
しかしそのような近代主義の反省に立ったはずの漸進主義は、やがて場当たり的な対応に陥って、新たな硬直を生む可能性は否定できない。
まちづくりの現場でボトムアップの姿勢を貫くためにも、新しい「連続体」の解釈を示していきたいと考えている。
「パリ大学ジュシュー校図書館コンペ案」(設計:OMA, 1992)や「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」(設計:foa, 2002)などを通じて1990年代から2000年代にかけて議論された「連続体」というコンセプトは、ベルリンの壁の崩壊やEU統合による新しい「連続」の機運のなかで生み出されたが、英国離脱やトランプ政権発足という「分断」が加速する現代にこそ、「連続」はメッセージ性を帯びる。

OM TERRACE | RFA | RFL

埼玉県さいたま市にある藤村龍至氏が設計した公共施設「OM TERRACE」!
大宮駅東口駅前に建てられた公衆トイレと駐輪場からなる建物で、屋上である2階には広場が設けられています。

屋上広場にはベンチも設置されており、一般の方がくつろいだり、イベントスペースとしても使用できるようになっていますよ。
この作品はグッドデザイン賞を受賞しています。

さいたま市/「OM TERRACE(オーエムテラス)」をご利用ください

 

 

ビルの家

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「BUILDING K」が完成して実際になかで過ごしてみると、設備スペースに面した小さな点検口の地窓(床面に近い窓)を開け、高窓を開けるときに空気が大きく動き、気持ち良く過ごせることに気がついた。
そこでもっと空気の動きを手がかりにした住宅を設計してみたいと思った。
住宅設計の相談があり、クライアントから示されたのは、東京郊外の住宅地にある、道路が約120度で交わっている交差点に面した角地だった。
当初は大きなヴォリュームを敷地のかたちに合わせて変形させていた。
やがてヴォリュームをふたつに分け、それぞれの角度を道路の交わる角度に合わせて配置した。
当初は片方が大きく、片方が小さかったが、それらがメイン/サブの主従関係に見えたので、それをなくしていくようにしていくと、ふたつのペンシル・ビルが並んだような住宅になった。
北側のV字の庭に給気のための地窓を集約した。
北側で冷やされた空気はそこから入り、東西に大きく開けられた高窓へ抜けていく。
南側の隙間に換気扇を集約させると、空気の流れが建築の配置ときれいに一致する。
当初は無秩序だった開口の配列に秩序が生まれていく。
北側の庭は「給気口の庭」と名付けた。
住宅を「ビル」として設計するというフィクションはいささか、奇妙である。振り返ると、設計プロセスの最初に想像されるものが設計をリードすることはないが、途中で想像されるものが設計の後半をリードする。
当初はシンプルな箱型のヴォリュームからスタートしたが、途中までは「家」らしく勾配屋根を載せてみたこともあった。
でもそれはやはり不自然だと思えて、やがてペンシル・ビルが出合ったかのようなかたちに収束した。
そのかたちは住宅地の風景にも、空気の流れと一致させるという機能にも、よりよくなじんでいるように思えた。

ビルの家 | RFA | RFL

神奈川県川崎市にある藤村龍至氏が設計した住宅「ビルの家」!
120度の角度で交わる角地に建てられており、2つのヴォリュームがそれぞれ敷地に沿って角度がつけらています。
ビルの家という名前のように住宅でありがらビルのような建物となっていますよ。



鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設

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「鶴ヶ島プロジェクト」が盛り上がっていた頃、ちょうど隣の敷地で別のプロジェクトが進んでいた。
工場跡地のブラウンフィールドに太陽光パネルを並べ、発電所にする計画である。
2011年3月の東日本大震災のあとで原子力発電に依存したこれまでの日本のエネルギー政策が見直され、太陽光発電所が注目されていた。
郊外の工場跡地には住宅需要も少ないため、太陽光発電所の設置にはぴったりであった。
ただし、住宅地にそんな大きな太陽光発電所をつくってもいいのか、疑問視する声もあった。
周辺住民と対話し、巻き込む手段として、私たちの試みが着目された。
ちょうど「鶴ヶ島プロジェクト」に取り組んだ大学生たちが10名、大学院に進学していた。
彼らが主役となってパブリックミーティングで投票を行いながら設計するプロセスはどうだろうかと思いついた。
計画中の施設には「環境教育施設」という名称がつけられていたが、内容はあまり具体化されていなかった。
小学校や病院であれば何をする場所なのか想像がつくが、新しい施設なので、何をするところかよくわからない。
とりあえず全体の面積と予算だけが決まっていた。
その状態で住民に意見を求めても、何を意見すればよいかわからないだろうと思われた。
そこで学生が建築家の役を務め、複数の案を複数回提示する。
その過程で住民の意見を反映すると同時に、どうしたら彼らを巻き込めるか、議論をすることができると考えた。
ここでもまた、彼らのつくる模型が役に立った。
ここで見せる模型は、建設予定のものを細密に再現するジオラマとは違い、「その時点で確かだと思えること」をとりあえずかたちにしたプロトタイプである。
全体の予算は決まっているが、必要な部屋のリストも、面積表もない。
自治体と民間企業が資金を出し合う複合施設なので、誰がメインの発注者なのかもよくわからない。
そんなときに、例えば敷地のかたち、面積、配置、屋根のかたちなど、とりあえず確かだと思えることをかたちにしてみる。
それをパブリックミーティングで提示して投票してもらいながら、何が課題なのかを探っていくのである。
10案の模型を提示する。
するとどういうわけかゼロ票の提案がある。
よく見ると、共通して2階建ての提案である。
投票のあとでヒアリングすると、近所の自治会館が2階建てで階段の昇り降りにお年寄りが困っているのだという。
そこで次回から「2階建てはNG」というルールが設計者にフィードバックされる。
このように初めから「平屋限定」とわかっていなくても、かたちにしてみたら「それはダメ」という項目が見つかることがある。
このようなやりとりを何度か繰り返すことで、設計の前提条件が明らかになることがある。
デザインという作業は、与件をすべて明らかにしてスタートするものとは限らない。
むしろ新しい課題は、かたちにしてみないと見えてこないことがある。
住民意見を聴く期間がしっかり設けられていたのにもかかわらず、建築工事が始まってから反対の声が上がることもあるのは、かたちになって初めて住民は事の重大さを知るからである。
市民に意見をヒアリングして「コンセプト」をまとめ、「かたち」はデザイナーに任せましょう、というプロセスがときに不自然に映るのも、デザイナーがかたちにしたものを見ないと、事の本質がわからないからである。

縮小とかたち
実施プロジェクトならではの学びはもうひとつあった。
集団で設計する時に、要求のヴォリュームと、予算の範囲内で実現できるヴォリュームのギャップをどのように共有するかという問題である。
本来ならば発注者が事前に要求を整理しておいて、予算におおまかに収まるように全体の面積を調整をした上で設計の発注がなされるべきであるが、集団で発注し、集団で設計する場合だと、そのコミュニケーションに工夫が要求される。
「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」のプロジェクトでも、当初は関係者から要求されている面積の合計が予算内で実現できる面積をはるかに上回っていた。
発電所の管理人が常駐する部屋と、市内の児童が訪れ環境について学ぶための部屋、鶴ヶ島市内にある企業が製造している鉄道模型を展示する部屋、というように、自治体と企業、それぞれの部署がばらばらに要求していたからである。
しかもそれぞれ別々に管理できるように、トイレもキッチンも別々にほしいという。
発注者と設計者が1対1であればそのような問題が見つかればすぐに交渉することができる。
ところが、いくつかの機能を複合化した施設の設計プロセスでは、誰が発注の責任者なのか曖昧になり交渉の相手が誰だかわからない。
ザハ・ハディドが関わった新国立競技場でも同じ問題が起こっていたようだ。
予算をオーバーしたのは勝手なデザインをした建築家が悪いのだ、と建築家のせいにされかねない。
そこで私たちは、少々アクロバティックであるが、10個のオプションを共通の特徴をもつ3つのオプションに絞った段階で、それぞれに対する見積り額を公開する作戦を採った。
3つのオプションに投票と意見交換を行ったあとで「皆さんのご希望を叶えるようにするとこれだけの金額になります」と金額を示したのである。
どの案も予定の2倍以上だった。
すべてのオプションの見積り額がオーバーしていたことで、原因はデザインによって生まれたものではなく、要求が多すぎることだったことがわかる。
パブリックミーティングで「さてどこを削りましょう」と問いかけた。
私はこの試みを「減額ワークショップ」と名付けた。
私たちは要求を出すことには慣れていても、要求を減らすことには慣れていない。
ワークショップは市民を自由にするが、ときとして謙虚さを失わせる。
アイデアを模型にすることで、プロジェクトが担うべきリミットを「かたち」にすることもできることを示したかった。
「設計の本質は見積り調整にあり」とは丹下研究室の浅田孝の至言である。
見積額が予算を大幅に上回ったときに初めて、ようやくどの要望を削るかを議論できる。
そのプロセスで案のなかのどの要素が大事でどの要素が大事でないかを区別することができる。
そのとき、いくつかのオプションがあると良い。そのような方法論を政策論では「オプション・アプローチ」というらしい。

記号とかたち
ヴォリュームを小さくしていくときに、アイデアを削るのではなく、アイデアは保存したままサイズだけを小さくすることはできないか。
オプションを3つに絞る際に、得られた3つのオプションは、特徴を整理し、それぞれの特徴を構成する要素を明らかにした上で類型化するという、極めて構成論的なアプローチを採った。
従って3つのオプションはかたちのレベルで10案の特徴を構成する要素をそれぞれ引き継いでいる。
私は3つの案にそれぞれ名前をつけた。
ひとつは象徴的な屋根とシンメトリーの平面形をもつ「教会型」。
もうひとつはやさしい勾配屋根でゲート型の配置を採った「駅舎型」。
もうひとつは親しみのあるスケールで街路を引き込みベンチを備えた「路地型」である。
投票では「駅舎型」の人気が高かった。
人気が高いものを投票で選ぶと、他の案を支持する人の意見を殺すことになる。
投票はあくまで見る人の主体性を引き出す仕掛けであり、結果の大小で多数決を取ることはしない。
投票のあとにヒアリングを行い、それぞれの案を支持する人の「選んだ理由」を聞き出す。
選んだ理由を知ると、建築のデザインに求めているニーズがわかってくる。
「減額ワークショップ」のあとで、トイレや部屋はできるだけ共有し無駄をなくしていくと同時に、3つの案を支持する理由となる構成要素はすべて残していくように統合した。
最終の1案は、3案の評価されたそれぞれの要素がすべて残るように、慎重にデザインされた。
3案はオリジナルの10案のオリジナルアイデアの何らかの要素が残るようにデザインされているから、最終1案にはオリジナルの要素が何らか残っている。
これは簡単なようでいて意外と難しい方法論である。
かたちを見て特徴を言葉に置き換える練習が必要である。
特徴はできるだけ単純な要素としてとらえた方が良い。
集団で設計するなら「教会型」「駅舎型」「路地型」と特徴を要約しつつ、想像力を喚起する記号的なアプローチがこの設計方法には合っていると感じた。
市役所で市長や市民が同席したシンポジウムでは、このアプローチについて塚本由晴さんから異議が述べられた。
塚本さんは「立ち上がってきたかたちに『教会』だとか『駅舎』だとか『路地』だとラベリングすることが暴力的だ。
鶴ヶ島には教会も駅舎も路地もない。
『未来と対話』するのではなく『過去と対話』するべきだ」という。
市長は「歴史を切断して急速に発展した郊外住宅地では過去の延長で場所をとらえることはできない。
『未来と対話する』というアクロバティックな回路を採らないとこの場所に場所をつくることはできない」と反論した。
いうまでもなく政治は「今ここ(right here right now)」の判断による影響を強めてしまう。
「歴史との対峙」はその後の課題となった。
また安易にかたちに「教会」「駅舎」「路地」と名前を与えてしまうことについても、慎重に考える必要があると感じた。

鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設 | RFA | RFL

埼玉県鶴ケ島市にある藤村龍至氏が設計した環境教育施設「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」!
工場跡地に建てられた太陽光発電所に隣接された建物で、駅舎型、教会型、路地型という三つの案を統合させたような設計案を採用しています。

パブリックミーティングで投票を行い、それを設計に反映させた新しい手法で作られた建築となっていますよ。
この作品はグッドデザイン賞を受賞しています。

太陽光発電 | 養命酒製造株式会社”  | 鶴ヶ島市公式ホームページ

 

 

小屋の家

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東京郊外の海沿いの崖地に住宅を建てたいというクライアントが現れた。
西南側に大きく開け、海が見渡せる絶好の土地だった。
東京都心部の建て込んだ場所と違って、のびのびと検討ができそうだと感じた。
ところがいざ検討を始めてみると、さまざまな制約があった。
急な傾斜地、かつ地下水が心配な土地である。
また背面の住宅の眺望への配慮から、できるだけ高さを抑えることも求められた。
厳しい制約に対して最大値を取るように設計を行うと、制約のありようを可視化したような、他律的な住宅になる。
制約から離れた自律的な建築はかたちが明快だが、コンテクストから離れてしまう。
自律的であり他律的でもあるような現れ方を私なりに求めていた。
あまり高さも取れないなら、1階は土留めを兼ねたコンクリートの基壇にガレージとベッドルームを収め、2階部分に木造の小屋を載せることにした。
緩い勾配屋根を掛け、鉄骨の細い柱で中心を支え、フルハイトの開口を西南側に設けた。
2階の間仕切りは途中までとし、小屋の上部に換気扇を設け、下から上への空気の流れをつくろうとした。
海側は寄棟、山側は切り妻で、両者でまったく異なる表情をもっているのがいいと思った。
妻面はもう少し高さが稼げたらより「家」らしいかたちになるのだが、ここでは我慢するしかなかった。
基壇の上に建つ小屋のような表情をしていたから「小屋の家」と名付けた。
山側から見ると山小屋のようであり、海側から見ると海小屋のようでもある。

小屋の家 | RFA | RFL

神奈川県横須賀市にある藤村龍至氏が設計した住宅「小屋の家」!
海沿いの傾斜した土地に建てられており、大きく開けた西南側にはフルハイトの開口が設けられています。
1階は土留めも兼ねられた鉄筋コンクリート造となっており、2階は木造の小屋のような建物となっていますよ。

 

 

APARTMENT N

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当初は箱に窓、というパタンで設計を始めたが、バルコニーの腰壁として現れる幅1mのコンクリートの帯を全体に拡大してはどうかと思い始めた。
柱と梁を幅1mのコンクリートの帯のグリッドに吸収させる。
断面は上下方向に3分割、平面は奥行方向に3分割。
それだけでできている。
本体としての箱と付属物としてのバルコニーというヒエラルキーもなく、窓という記号を使わずに、全体を「帯のグリッド」として設計できたと感じた。
「BUILDING K」から4つの住宅(「ビルの家」「倉庫の家」「小屋の家」「家の家」)までは建築の全体を記号の塊としてとらえるのに精一杯であった。
3つのアパートメントの習作を経て、建築を記号体から連続体へ取り戻せたという感触を得た。

APARTMENT N | RFA | RFL

東京都目黒区にある藤村龍至氏が設計した集合住宅「APARTMENT N」!
コンクリート打ちっ放しのかっこいい建物で、バルコニーがぐるりと帯のように周りに設けられています。
2階部分の一部のバルコニーを取っ払うことにより、1階に光が入るのはもちろん、2階からの景色を見下ろすことができますよ。

 

 

倉庫の家

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日本では土地の所有者が死亡すると、遺族らが相続する際に多額の税金を支払わなければならない。
そのために土地を手放さなければならなくなることが多い。
したがって東京の住宅地ではしばしば、住宅1軒が建つ土地がふたつ、3つに分割されて売りに出され、同じような住宅が2、3軒建てられ、販売される。
クライアントから示されたのは、そんな東京の住宅地で典型的な、手前と奥に2分割された小さな土地だった。
自動車を置くとほとんど空間が残っていない。
1階はガレージで奥に玄関と水回り、2階にリビング、3階にベッドルームというのがこの類の住宅の定番である。
が、定番どおりに住み方が決められてしまうのは避けたい。
突破口になったのは地盤の条件だった。
支持層が絶妙な深さにあった。
もし地上部を鉄骨で軽くし、地下に部屋を設けると杭を用いずに辛うじて届きそうな深さ。
地下に部屋を設けるのはコストがかかるが、地上3階建てを地下1階地上2階建てにして杭を省略できるならばバランスがとれる。
地上部は3階分の高さ制限のもとで地上2階にできれば、高さ方向に1.5倍の余裕が生まれることになる。
通常は車の高さギリギリに設けるガレージの高さを大きく取った。
ガレージはエントランスホールのような、大きく明るい空間になった。
周囲は建て込んでいるから窓は慎重に開けなければならない。
慎重に、慎重にと窓を減らしているうちに窓はどんどん少なくなり、正面に窓のない家になった。
地下室の光庭から吹き抜けを介して屋根のトップライトまで、室内に大きな煙突のような空間をとったところ、室内を大きく空気が流れることとなった。
設計を終えて眺めてみると、壁面が大きく、窓が少なく、ガレージとともに大きな庇のある、倉庫のような家だった。
そこで私は「倉庫の家」と名付けた。
クライアントは出版関係の仕事をしている方だったので、「倉庫は私にとってなじみがあります」と言って気に入ってくれた。

倉庫の家 | RFA | RFL

神奈川県にある藤村龍至氏が設計した住宅「倉庫の家」!
倉庫のような地下1階と地上2階建ての建物で、地下の両端にはドライエリアが設けられています。
地下空間が設けられたことにより、地上1階と2階部分はそれぞれ1.5階層分の余裕のある高さになっていますよ。

 

 

つるがしま中央交流センター

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東京郊外の埼玉県鶴ヶ島市の住宅地に立つコミュニティ施設である。
自治会館の建て替えに際し、国の補助金(地域創生拠点整備交付金)を活用して「交流サロン」や「地域包括支援センター」などの新しい機能を加え、地元住民による支え合い協議会が管理運営を担う地域の経営拠点として計画された。
前面の道路からみて手前側にコミュニティ・レストラン、支え合い協議会のオフィス、地域包括支援センターなど日常的に人がいる場所を、奥側に稼働していない時間帯も多い集会室や倉庫などを配置した。
多くの機能を横断するように長い水平窓を配し、一定の勾配で連続する屋根を架けることで全体を一体的につなぐことを考えた。
雁行しながら連続する窓においては、コーナーで内外からの視界を遮らないように100mm角の柱とトラス梁で構成されるラーメン構造が採用された。
屋根は金属折板が用いられ、4mピッチで架けられた梁は可動間仕切りの欄間として機能する。
最も苦心したのはキッチンの配置である。
キッチンをコミュニティのコアとして機能させるため、飲食店の営業許可が取れるように準備し、交流サロンと隣接させ、外からも見えるようにコーナーに配置した結果、とあるNPOからコミュニティレストランを運営したいとの申し出があり、現在では毎日ランチが提供され、地域の方々が気楽に集まる場所となった。

つるがしま中央交流センター | RFA | RFL

埼玉県鶴ヶ島市にある藤村龍至氏が設計したコミュニティ施設「つるがしま中央交流センター」!
自治会館や地域包括支援センター、レストランなどからなる建物で、異なる機能を横断するように水平窓が設置されています。
常に人がいるレストランや地域包括支援センターなどは手間側に配置し、反対に使われないことも多い集会所や倉庫などは奥側に設けられていますよ。

 

 

藤村龍至氏は建築に関する本も出していますよ。

批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして
批判的工学主義の建築:ソーシャル・アーキテクチャをめざして

 

どの建築作品もおもしろいものとなっていますね。
以上で建築家の藤村龍至の建築作品10選。代表作のすばる保育園やBUILDING Kなどでした。

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